………きっと今思った事じゃない。
少し前から心に引っかかってたのは多分このことなんだろう。
なのに何故今こんなに不安になるの……?
少しため息をついて窓の外を見る。
こんなにいいお天気。そして今日は素晴らしい記念日。
なのにこんな気分になるのだろう…
そう、違和感は幽助が魔族になったと聞いた時からあったんだ。
あの時は別に変わらないならそれでいい、単純にそう思ってた・・・・
一年半前
幽助は帰って来た。
行く前と変わらない姿で、いつも通りの笑顔で。
三年という約束は破ったけど、早く帰ってきてくれたことが正直うれしかった。
いつも通りの日常に戻るんだ……いつもどおりって何だっけ?
学校行って…バカやってる幽助を(殴って)止めて…
そんな普通の日々を何の疑問もなく過ごしてた。普通に楽しい日々。
そんな時に唐突に幽助がこういった。
「なぁ、覚えてるか?」
「…なにを?」
「魔界に行く前にさ三年たったら結婚しようって」
「…そーいえばそんな事言ってたわねー」
と返したものの…結婚とかそういう関係になるとかいまいち想像ができない。
今となにが変わるのかな…ってまだ三年たってないし、高校すら卒業してないんだけど…
「本気?」
幽助の性格からして嘘だったり冗談じゃないのは分かってるのについ、聞き返してしまう。
「もちろん。」
ほら、やっぱり。
「まだ一年以上あるし…どうなるかなぁ」
「螢子~そんなこと言うなよ~」
「はいはい、まずは卒業してからね」
そしてまったりとした楽しい日々はすぐに過ぎて…
今に至るのである。
「こういうのをマリッジブルーって言うのかな・・・」
そう、今日はその約束の日。つまり結婚式場にいるのだ。
はぁ…と花嫁衣装で思わずため息。
なんとも言えない気持ちでいると…コンコン…誰か来た。
「どうぞー?」
「わぁ、綺麗~結婚おめでとうございます」
「はえぇもんだなぁ…おめでとう、螢子ちゃん」
「あら桑原君と雪菜ちゃんじゃない、ありがとう」
いつもの笑顔で返したつもりでいたけど、微妙な所を桑原君に感づかれてしまったみたい。
うーん、さすがするどい。
「どうした?ちょっと暗くないか?こんなおめでてぇ日だってのに」
「ちょっと色々思う所があってね…大したことないから気にしないで」
思う所…それはここ数年の変化。
私は3年間で背も、体つきも変わった。生きているから当たり前のこと。
でも…幽助はあのころのまま何ひとつ変わってないのだ。
身長すら…追い越してしまった。
気がつかないわけにはいかない、魔族となってしまった幽助は人間である私と時の流れが少しずつ違ってきてる事を。
それが今の悩みだった。
本当に結婚して幸せになれるのだろうか、きっと若いままだろう幽助に嫉妬せずに居られるか。
確実に私の方が先に死んでしまい、長い間幽助を一人にさせてしまうことになる…
そんな胸中を察したのだろうか、桑原君が
「考えてることは大体分かるさ、俺も似たような立場だからよ」
そう、雪菜ちゃんは氷女という妖怪。
どんなに一緒に居たくても寿命の違いはどうしようもない、同じ立場だからこそ察せたのだろう。
ただ、雪菜ちゃんと桑原君の仲はそこまで進展してはいないみたいだけど。
「あんまり深く考えない方がいいぜ、浦飯のヤローは絶対何も考えてねぇんだからよ。それに…」
「それに・・・?」
「螢子ちゃんは子供が作れるじゃねぇか。そうしたら浦飯は一人になることは絶対ないぜ。」
この言葉にハッとした。
そう、桑原君には思いが通じでもこの手段は取れないからだ。
氷女は交わって子供を作ると死んでしまう…そう教えてもらったから…
「そっか・・・桑原君、わざわざありがとう」
「いやいや、これぐれぇなんでもねぇさ」
ふふっ
暗い気持が少し晴れた気がした。
「それじゃ邪魔したな式、楽しみにしてるぜ」
「またね、螢子さん」
「ありがとうね」
退室していく二人を笑顔で見送った。
ねぇ幽助、私も愛してるよ
「・・・照れずに本人に言えればいいんだけどなぁ」
[2回]
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